「お前はクビだ!明日から来なくていい!」といったセリフは、今どき聞かれなくなっている。日本では法律によって労働者の立場が守られているためトラブルを起こしたとしても、そう簡単に解雇することはできないのだ。
しかし、解雇が全くないというわけではない。状況によっては「すぐに辞めろ」と言われるケースもある。それがこの記事のテーマとなる「懲戒解雇」だ。
また、退職代行サービスを利用して会社を辞める場合、退職代行サービスで会社を辞めるなら懲戒解雇処分になってトラブルになるのではないかと心配している方もいるかもしれない。
この記事では懲戒解雇という処分についてどのようなものなのか詳しく紹介していく。
退職代行サービスを利用して会社を辞めると懲戒免職される可能性があるのか、どういった場合に懲戒免職にならないのか、といったこともしっかりと解説していくので、退職代行サービスの利用を考えている人も、考えていない人も、ぜひ最後まで読んで、参考にしていただければ幸いだ。
懲戒解雇とはどういうこと?
懲戒解雇とは、従業員に対して課す一番重い懲罰処分であり、雇用契約を直ちに解除する非常に重大な行為といえる。
会社が従業員を解雇する場合には、次の3つのケースがある。
会社の経営上の判断で従業員の数を減らすための解雇。
「普通解雇」
経営上の理由以外で従業員に辞めてもらう解雇。
「懲戒解雇」
会社からの懲罰的意味で従業員を辞めさせる解雇。
整理解雇と普通解雇は、通常30日前に解雇予告を出し、退職金制度があれば退職金も支払われる。それに対して、懲戒解雇の場合は即時解雇となり、退職金も支払われないことが多いという大きな違いがある。
退職金の有無以外にも、転職活動において退職理由を聞かれた場合には、懲戒解雇のことを伝えなければならず大いに不利となる。
また、失業手当の給付を受ける際にも、普通解雇は会社都合退職と同じ扱いになり、有利な扱いになることが多いが、懲戒解雇では自己都合で辞めるケースと同じ扱いとなり、給付日数が短くなるといった不利益が生じることになる。
会社が従業員に対して制裁の意味で行う処分には、懲戒解雇のほかに、懲戒免職、停職、戒告、減給といったものがある。
こうした処分の中で、懲戒解雇は一番重い処分で、間違った対応をするとトラブルに発展することもあり、簡単に行うことはできない。そのため懲戒解雇が許されるにはいくつか条件がある。
「就業規則上の規定の有無」
就業規則に懲戒解雇の規定がなければ懲戒解雇することはできない。また、懲戒解雇の事由が就業規則に明記されている必要がある。
「適正な手続き」
懲戒解雇は従業員にとって非常に重いペナルティとなるため、一方的な処分をすることはできず、弁明の機会を与える必要がある。こうした適正な手続きをとらずに課した懲戒解雇はトラブルに発展し無効になる可能性がある。
「解雇の合理的理由及び社会的相当性」
懲戒解雇の事由に当てはまるのか、社会的にみて適切な処分なのか、といったことが懲戒解雇できるかどうかの判断基準となる。
退職代行サービスを使っても懲戒解雇にならない理由
懲戒解雇というのが従業員に対する非常に重い処分であり、トラブルを起こしたからといって、会社側が従業員に対してそう簡単に課することができない、ということはご理解いただけたかと思う。
では、退職代行サービスを利用して辞める場合はどうなのか。結論としては、退職代行サービスを使って辞めることになっても懲戒解雇になることはない。
なぜなら、従業員は2週間前に意思表示をすればいつでも雇用契約を解約し、会社を辞めることができると民法で規定されているからだ。
退職代行サービスは、その意思表示を代行したに過ぎないので、退職代行サービスを利用して会社を辞めることを理由に懲戒解雇することはできず、仮にしたとしても無効となる可能性が高い。
たとえ退職代行サービスを利用して、引継ぎをせず即日辞めることになったとしても、引継ぎを行うかどうかは法律の規定があるものではないので法律上の問題はない。
ただし、退職の明確な意思表示をせず、出社しない状態が続くとトラブルになり懲戒解雇の可能性が生じるので注意が必要だ。
会社を辞める時に懲戒解雇などのトラブルになる場合は?
では、どういった場合に懲戒解雇になり会社を辞めることが考えられるのか、具体的にみていくことにしよう。
1.犯罪行為をした場合
業務上の横領や背任といった直接会社に損害を与えるような犯罪行為はもちろん、社外での犯罪が会社の業務に大きな影響を与えると考えられる場合には、懲戒解雇の対象となりうる。
例えば運送会社でドライバーの仕事をしている従業員が、勤務時間外に飲酒運転し人身事故を起こしてトラブルになったような場合が考えられるだろう。
2.業務命令違反
配置転換に従わない、必要な残業を拒否するといった業務命令に違反する行為も、企業の秩序を乱すトラブル行為として懲戒解雇の理由となりうる。ただし、どんな業務命令違反でも懲戒解雇になるかというとそうではなく、重大な業務命令違反で、企業秩序の侵害があるということが条件となる。
3.重大なハラスメント行為
昨今は大きなトラブルとして問題になるパワハラやセクハラといったハラスメント行為も、懲戒解雇の理由となりうる。ただし、会社側にもハラスメントの防止対策をすることが義務付けられており、従業員にハラスメント行為があったからといって、直ちに懲戒解雇はできない。
4.長期の無断欠勤
長期にわたって無断欠勤を続け、会社からの出社命令を拒否し続けている場合には、懲戒解雇が認められる可能性がある。
5.重大な経歴詐称
経歴詐称も会社の人事・採用に影響を与えたとして懲戒解雇の可能性がある。この場合も重大な経歴詐称があった場合に限られる。
6.機密漏洩
会社の重要な機密情報を同業他社に漏らしトラブルになるような行為は、懲戒解雇の対象となる。これも単なる不注意や管理不足であった場合には認められない。
まとめ
ここまで懲戒解雇について説明してきたが、従業員にとって非常に重い処分であるので、トラブルを起こしたからといって会社側は簡単に処分を下すことができない。
また、退職代行サービスを使って辞めることも懲戒解雇の原因にならないことを説明した。
退職代行サービスを使って会社を辞めることを快く思わない経営者も少なくないが、そのことを理由にして懲戒解雇とすることはできない。
そのため、退職代行サービスを使ったことで懲戒解雇などのトラブルに発展することはないので、安心してほしい。
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